風雲文庫
熱海の市街地とビーチを贅沢に一望できる物静かな別荘地の、観光客がまず立ち入ることのない一番奥の区画に、大きな鉄扉と草木に隠れて、一風変わった建物がある。
観光ガイドやそれに類ずるモノにまったく紹介されることのない、究極の「独立系」スポット、風雲文庫だ。
風雲文庫が、世に名前を広めないのには理由がある。
ここは、人を選ぶからだ。
何も知らず、誰かに引率されて来たのなら、不愉快な気持ちになるかもしれない。
独自の哲学を再現したかのような宗教的な塔の内部には、個人コレクター氏による第二次世界大戦前後の資料が陳列されている。
その陳列の仕方は、一貫した意図・美学に基づかれていて「戦争の悲劇や過ち」を伝えるような教育的分別くささがまったくない。
戦時中のポスター類や生活用品、当時の新聞などの他に、盃、腕章や軍服、三島由紀夫、亜細亜地図などがあり、
政治的メッセージを消し、軍国主義・国粋主義的な美学が、ガラスケースの中に詰め込まれた感じだ。
妙にリアルで、タブーな感じがして、薄ら寒い。
さらに、断崖にある建物の地下室(完全撮影禁止)には、ヒトラーやレーニンなどの資料や遺品がギッシリ並び、偏執的な軍事美学を見ることができる。
そのなかには国際秘密結社フリーメイソンの豪華本などもある。
古い町の高級避暑地の洋館。謎の塔。地下室。資産家の私的コレクション。国際秘密結社。
まるで少年探偵団のような、懐かしくて分かり易いヤバさがあった。(酒井)



